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五十嵐潤 All rights reserved.
【その 2】
デビュー曲も上がり後援会長も決まり、いざ半金を・・・と云う時に後援会長がガラッと態度が変わり『会社の経費扱いでは・・・』この時思った。手の上にお金が乗るまでは、諸手を上げて喜んではならないと・・・愕然とした。そんな時そのレコード会社と半分づつ出し合うお金を出してくれたのが、師匠の昔からの後援者で、『あなたが認めた弟子ならと、当時の1千万を出して万事収まる。さあ!いざ、あの北島さん、鳥羽さん、瀬川さん達もレコーディングした東京スタジオへ、初めての本格的な録音
時間猶予は 8時間、内歌唱可能は、6時間の間に納めななければならない。緊張は増すばかり、まして上から釣り降ろされている写真でしか見たこともない、マイク(身動き、
足のポキッと云う骨の音、リップと云って口の中でピチっと言う音もすべて鮮明に拾ってしまう)を相手に、金魚鉢と云ってスタジオのブースへ入れば、針の上のむしろ状態。分厚いガラスの向こうでは、頭を振ったり、笑いあったり
変な顔されたり・・・でもこちらのヘッドフォンには何も聞こえず、スタジオ側があるボタンを押すと聞こえる仕組みだ。なにより嫌なのがガラスのむこうで顔を歪ませながら、悩みながらヘッドフォンから聞ここえる声は『うん、なかなかいいよ
いいよ そのまま もう一度最初から行ってみようかあ』えっ! いまのは 良かったんじゃあ?
・・・どこが悪いんだろう?どう歌えば!レッスンした通りやってるつもりなのに・・・(レッスン歌唱と、商品になる場合の歌唱は全く違う)それを何度か繰り返してる内に『OK!じゃあ
今度は 部分的にもらって行こうか?』はあ? と思いつつ 部分的と云っても、繋ぎ 繋ぎで 結局 全部の部分を歌う事になった。何度も 『ハイ! そこのところ
もう一度やってみようかー』の連発で 頭 パニックになり、みんなの表情も気になり、音も外したり、リズムも狂ったり・・
何度も同じ箇所を歌ってるうちに妥協点を探す・・・ と云う作業がA面には 随分費やされる。なんとか A面の録音は終わり『はい!こちらに来て 一緒に聞こうかあ
ー』やっと休憩だ2時間少しが経っていた。当時は今とは違い オープンリール (約8cm幅以上もあるテープが回りだす。そこでも
プロデューサーとディレクターのやりとりで、『あっ!今の所はテーク何番と差し替えていこうか!』のバトルを歌い終えた僕は、ボケーっと聞いてるだけ・・・ 。